2022.07.29 The Clothesline with Sister in Nagoya Workshop
2022年7月29日 名古屋市中区栄のunlike.にて
TheClothesline with Sister in Nagoya のワークショップが開催されました。
ワークショップではメキシコとオンラインでつなぎ、TheClotheslineのアーティストモニカ・メイヤーのトークが行われ、その後質疑応答がされました。
※当サイトの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
また、まとめサイト等への引用を厳禁いたします。
Mónica Mayer:本日はお呼びいただき、ありがとうございます。
新しいTheClotheslineが出来上がるのをとても楽しみにしています。
これから私にとってTheClotheslineがどういう意味を持っているのか、また他の女性たちによってどのようにこのアート作品がツールとして使われたのかをご説明します。
TheClotheslineは私がとても若いときに始めたもので、最初は自己防衛のためにもなったものでした。 私は公共交通機関でセクハラを受けることにうんざりしていましたし、他の女性もそれをいやがっていることを知っていました。 当時、メキシコのフェミニズム運動はとても小さい輪で、この写真に写っているデモに参加した女性たちだけと言っても過言ではないでしょう。
しかし、現在においてはTheClotheslineは様々な方法で使われてきました。MUAC(Museo Universitario Arte Contemporáneo メキシコ自治大学現代美術館)でのThe Clotheslineで集められた回答カードは、大学の研究者であるMónica Benítezによって、アーティストの作品におけるアーカイブを研究するために使用されました。また、彼女はメキシコ、アルゼンチン、アメリカのTheClotheslinesの回答を比較し、論文を発表しました。
このTheClotheslineは、アメリカの民主党と共和党の女性で構成される、性暴力と闘うグループ”Women4Change”が企画したものです。 私は彼らにワークショップを行い、彼らは州内でTheClotheslinesを作り、それを持って議会に行き、同意に関する法律を変えてもらいました。
近年、メキシコでは学生たちが自発的に『The Clothesline』のフォーマットを使って、自分たちにハラスメントをする教師を糾弾しています。まるで#Metoo運動のアナログ版のような感じです。彼女たちは、それをすることでしばしば脅迫されたりもします。しかもほとんどの人は、The Clotheslineがアート作品として始まったことを知りません。 しかし、私がワークショップを行い、TheClotheslineを作ったいくつかの場所、例えば2017年のチアパス州ではこれをみた大学の教員たちがこの回答を見てそれをもとに大学のセクハラに対するプロトコルに反映させることができました。それは学生の実態をうまく取り入れた動きでした。
メキシコの女性たちは、しばしば性暴力を法的に糾弾するよう求められます。しかしそうすると、自分のせいだと言われたり、犯罪が起こったことを証明しなければならなかったりします。また、それをするにも費用と時間がかかるので、貧しい女性には糾弾する余裕がないのです。メキシコでは人口の6割が貧困層です。 その結果、糾弾したり訴えたりする女性はほとんどいません。
このTheClotheslineのときは、女性たちに「なぜ訴えないのか」「声を上げたらどうなったか」を教えてもらいました。 この回答カードは、活動家グループによって、これらのケースの法的な処理方法を変えるよう政府に圧力をかけるために使われる予定です。
The Clotheslinesの回答は、SNSやWebを通じて共有されることもあります。 例えば、アメリカ・ワシントンの国立女性美術館(NMWA)は、The Clotheslinesのすべての答えをデジタル化し、館のページで共有しています。 また、The Clothesline with Sister in Tokyoでは、数ヶ月前から毎日答えを共有しています。 これは、答えをアーカイブして、より多くの人々と共有するための方法です。
メキシコのアーティスト、イッサ・テレス(Issa Tellez)はTheClotheslineを身にまとう作品を発表しました、彼女が初めてClotheslineに自分の答えを持って参加したとき、いかに自分が「お互いに助け合うことができる」「頼り合うことができる」と感じたかを語っています。
あなたが今始めようとしている「Clothesline」が、あなたや他の女性たちを伴走者として感じさせ、ネットワークを構築する手助けになることを願っています。
Q and A
Q1.お話ありがとうございました。驚いたのが、アートの中にアクティビズムやプロテストの面が強くあったということで、感動しています。お聞きしたいことは、韓国で江南事件(ソウル江南トイレ殺人事件:2016年5月17日に、韓国ソウルの江南駅近くのトイレで発生した、34歳の男性が面識のない女性を突き殺した殺人事件。犯人が公衆トイレで女性が入ってくるのを待ち伏せていたことが知られ、女性を狙った無差別殺人だったことが明らかになった。)というのがあって、女性たちがポストイットを使って声を上げたという出来事を思い出したのですが、そういうポストイットの活動をご存知かどうか伺いたいです。
A1.いいえ、知りませんでした。これからインターネットで調べてみます。
でもその話を聞くと、これはすごく自然な反応というか、大変な出来事が起こったとき、自分や他者の経験を共有するところから始まるというのは自然な反応なのではないかと感じました。
Q2.前回モニカさんの作品を3年前に見せていただいたときに「沈黙のクロスライン」の状態の時で、質問の回答カードを一つも見ることができなかったんですけど、その次に表現の不自由展のときに自発的にTheClotheslineが開催されていて、政治的な内容の回答カードが貼られていました。違う場所でやっているクローズラインなのにつながっていることがすごいなって思いました。
日本では愛知で沈黙のTheClotheslineがあって、そのあと全国各地でTheClotheslineが次々と開催していたりしているという現象について、モニカさんがどういう印象を受けとっているのかについて伺いたいです。
A2.私は日本での独自の展開に対してすごく嬉しく、光栄に思っています。日本でのTheClotheslineの展開は、これまでのTheClotheslineの中で一番長く持続的に続けられていることです。この日本のTheClotheslineについて別の場所で話すときは「ミュータント(変異種)」と説明しています。それはいろんなところで、いろんなかたちで再構成されていていつも驚かされているからです。しかもそれら全てがすごくリアルで真摯なものだと感じています。
Q3.モニカさんは女性に関する作品を多く手掛けていらっしゃると思うのですが、いまトランスジェンダーなどで「女性」という言葉自体もすごく広義になっている、多様化してきていると思うのですが、そのへんはどのように考えていらっしゃいますか?
A3.私が作品を作るときは制限は特に設けていません。特にTheClotheslineでは参加者は女性、シス女性、シス男性、トランスジェンダー・・・誰でも参加できるものとして展開してきました。でもテーマとしては「女性に対しての暴力」を中心に設けています。それは私が始めたときにそういう意図で始めたからであって、でもこれからは時代とともにTheClotheslineも変化していくものであると思います。
これまでに例えば、「トランス女性限定でワークショップをしてください」とか「トランス男性限定でしてください」という依頼はなかったんですけれど、もしそういう依頼が今後あると知れば、私は喜んで開催したいと思います。
数ヶ月前にベネズエラでTheClotheslineのワークショップを行ったんですけれど、そこではベネズエラの黒人女性に特化したワークショップを行いたいとおっしゃっていました。それはやはり黒人女性が抱える暴力の問題は白人女性とは異なるものなので、彼女たちに特化したワークショップを行いたいという要請がありました。
また、他にも看護師とのワークショップもおこなったことがあります。看護師が経験する暴力もあり、それも特異な暴力なので、看護師たちに限定したワークショップとして行いました。
カトリック教会のシスターたちがワークショップを行いたいというのでそういうグループとともに開催したこともあります。
私は暴力を告発したい人なら誰とでも喜んで協働したいと思っています。
しかし最近メキシコで依頼されたものが、ある政党の政治家が別政党の政治家たちの暴力について告発したいというものがあったんです。それはやはり躊躇しました。なぜかというと権力者どうしの権力争いなので、そこには巻き込まれたくないと思って、それは参加しませんでした。
Q4.モニカさんの目線からみて、最初に始めた頃と近年で大きく変わったことはありますか?また逆に変わらないものだけど変えたいもので、また変わらない原因は何だと考えられているのかが気になります。
A4.全てが変わりました。良くも悪くもですけどね。
少なくともメキシコにおいては女性に対する暴力はいまだ残虐なままです。一日に10人のフェミサイドがおこっています。ハラスメントもまん延していて、それがひどすぎるのでバスや地下鉄も男女別になっています。
良い変化としては何百万人以上の女性たちがこれに対して闘っていることです。
また、TheClotheslineはいろんな人が利用できる方法論になりました。
変わらない原因や理由というのは、すごく複雑で難しい問題です。最初に女性たちが「STOP!!!」と声を上げることから始まると思います。
そしてやはり次は教育が大事です。その教育は何のためかというと、あらゆるタイプの種類の抑圧を理解して、なくすためにとても重要です。
私の希望としては将来、TheClotheslineをみた鑑賞者が「昔ってこんなひどいことが本当に起きていたの?」という反応があることです。
Q5.今日、ここに展示してあるTheClotheslineを見て、その内容に共感しすぎてしまってちょっと悲しい気持ちにもなったんですね。世界でこういう活動をすることはすごく重要だと思うのですが、悲しみが合ったときにその悲しい人たちに対してどういう声をかけるか、また、モニカさん自身はどのように自分にご褒美を上げているのかを知りたいです。
A5.実は私自身はあまり回答をじっくり読むということはしません。さきほど紹介したイッサ・テレス(Issa Tellez)というアーティスト、TheClotheslineを身にまとう作品を作ったアーティストは他の人の回答を読むことによって自分が一人ではないという気持ちになれることが大事だよねとおっしゃっていました。
「ビター&スイート」といいますか、一方ではとてもつらいのですが、もう一方ではたくさんの回答を読むことによって、これは個人的な問題ではなく、社会のシステムの問題であると理解することができます。それによって私たちは強くなれるのです。
私たちは暴力の被害にあったときよく「あなたがなにかしたんじゃないのか」というように被害者が非難されることがあります。でもこのTheClotheslineの回答を読んでいると、例えば5歳の女の子が被害にあっていたりすることを知って、そんな小さい子どもの何が悪いと言えるのでしょう?つまり、これらの問題は個人にあるのではなく、社会的な問題であることが可視化されるのです。
私たちは誰も暴力を受けるべきではないのです。私達が暴力を受けるためになにかしたわけではないということがTheClotheslineを通して理解できます。
しかし多くの人は暴力の被害にあうとなぜか自分のほうが恥ずかしくなったり罪の意識を感じたりします。
だけど本当に恥じ入るべきなのは、暴力を振るう方です。
なのでそういうことを考えると、私はすごく怒りを感じるのです。それを原動力にして活動を続けています。
Q6.私はフェミニズムの知見があまりない状態で今参加しているのですが、私は「セルピコ」という映画がすごく好きで、そのなかに女の人が頭に銃を突きつけられて暴行されているシーンがあるんですけれどそれを見たときに、これは映画の中の世界としか捉えられていなかった、(映画的な)表現方法だと思っていたのですが、今回いろいろなお話を聞かせていただいたときにまだ実際にそれに近しい状況が違う国では起きているんだということを,
とても衝撃を受けています。
私達自身が自分の身を守ったり、フェミニズムを発信するためにモニカさんの活動や考え方がいろいろな人の力になったり世界が変わったりするのではないかということをすごく感じました。
A6.ありがとうございます。
Q7.私も感想になってしまうんですが、今回はじめてこのアート作品を見させていただいて普段#Metoo運動とかでも他の人の体験とか経験とかを見たりすることがあるんですけれども、手書きで書かれているのが凄くリアルで、その人の体験を本当に聞いているような力強さで。だからネットとかで見る文字とかと全く違って、参加してそこで直接メッセージを見ることの意味がすごく伝わってきて、こういう活動をしてくださって本当にありがたいなと思います。
A7.とても嬉しいです。ありがとうございます。
0コメント